Escape from the DEAD
答えられないのも無理はない。

体液や鮮血を浴びて、髪の毛までドロドロに汚れてしまっている。

芹でなくとも精神的なショックを受ける筈だ。

「自分は、小川 和也(おがわ かずや)二等陸曹だ。昨夜のゾンビ達の襲撃を受け、単独行動を強いられている」

小川は芹のそばにしゃがみ込む。

「自分一人でどこまで守りきれるかは分からんが、よければ君を護衛しよう。共に来るか?」

戦慄と恐怖で虚空を彷徨っていた芹の瞳が、小川を見つめ返す。

共に行く。

屋敷を出てからまだ間もないというのに、芹は他人の温もりに餓えていた。

誰かと一緒にいるという安心感。

身の危険に晒されて、温もりを欲するという感情はより顕著なものになっていた。

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