君が愛した教室

「ねぇ、さっきの授業の始め、窓見てにやついてたでしょ?」

そう話し掛けてきたのは親友、里子だった。

「え…?べ、別に何も!」

焦って答えたのが変に思わせたかな。里子は怪しい目で私をじっと見つめた後、不満気つつも話を変えた。

「来年の文理選択、沙奈はどうすんの?」

「私は文系かな。世界史とりたいし。」

高校1年で秋を迎える今、来年からのクラス。文系か理系かの選択を迫られていた。
私は前から世界史に興味があったし迷いなく文系に進むと決めてたけど、里子はまだ迷ってるみたい。
進路選択だもんね。迷って当然だよ。

「でも、沙奈が文系なら私も文系かなあ。」

「そんな理由で決めちゃうの!?」

「嘘嘘。元から文系向きだったし。志望校も文系なんだ。」

志望校か…つい最近まで文理を悩んでた里子だけど、志望校ちゃんと決めてたんだ。
私は文系に進むってだけで志望校なんか考えた事ない。
なんか、急に里子が遠くなった気がする…

「大丈夫!沙奈は頭良いんだから志望校なんかすぐ決まるって!」

里子はそう言ってくれたけど、将来の夢もない私に志望校なんて言葉は程遠く聞こえた。



< 2 / 21 >

この作品をシェア

pagetop