『ただ片想いに戻っただけなんだ』
けどキスより先へは、なかなか進まなかった。



進めなかった。



仕事が終わってから、夜デート。


ご飯を食べて、ドライブして、キスをして。帰る。


彼は少し先に進みたそうだったけれど。



車の中でキス。


抱きしめられた体。


触られた胸。


全身が熱くなる。



だけど私の体は、いつも強張って固まってしまう。



私の体はその先をまだ知らなかったから。



彼はそれを知らない。



シートを倒された瞬間。


私の体は驚き、反射的に起き上がる。



すると彼は、



『ゴメン』



そう謝って、すぐに優しく微笑んで軽くキスをする。



心苦しかった。



だけど、初めてだということを彼には知られたくなかった。



知られたら引かれてしまうんじゃないか。


面倒だと思われるんじゃないか。


もうデートしてくれなくなるんじゃないか。



そんな思いばっかりが頭を過ぎって、


言えなかった。



そんな日が続いた、デートから帰った夜。



彼から一通のメール。



「俺と実久ちゃんって付き合ってる?」



分からないのは私の方だったのに。



彼も分からなかったんだ。



だけど私はどう返せばいいのか分からなくて、



「それは私には分からない」



そう返した。



するとすぐに彼から電話。



『じゃあ付き合おう』



嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。


驚いて、泣いた。




この日から私たちは、


「浩」と「実久」になった。
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