☆ハイローハート
ぼそりと言ったその言葉にパパが「そうでもないよ」とホットコーヒーを持って、アタシの手の中の小さな猫をのぞきこんだ


「色々な説があるからはっきりとは言えないけれど、イルカが集団座礁した話とか、虫が子供に自分の体を食べさせたりとか、他にもある」

「それは、人間のする“自殺”とは意味が違うじゃん」

「命を捨てた、ことに違いはないだろう?」

「種を守るために、子供を育てるために命を捧げるのと、捨てるのは一緒じゃない」

「確かに、それも一理あるね」



あいまいではっきりと自分の思いを言葉にできないことがじれったかった


アタシ達は、命をあやめて命をいただいて生きていかなくちゃいけないのなら、ありがたく“いただきます”して、その命を無駄にしないために、自分の命を大切にして生きていかなくちゃいけないはずだよ

自らを捨てたら、今までの何もかもパア


必死で命を守る姿は偉大で深い愛情に溢れていて

必死で生きる姿は美しく輝いている……


ねえ、そうだよね?


矛盾だらけの“命”論



アタシはただ、手の中の命を守りたいだけで


たとえもう手遅れで生きれないのだとしても……


冷たいアスファルトの上で、ひとりぼっちなんかじゃなくって


せめて鼓動を感じるぬくもりの中でほんの少しだけでも心安らかであってほしいだけ



これは、キレイ事かな


でも、キレイ事でもいいや



だってこの子……こんなに小さくて、こんなにかわいい


ものすごくかわいいんだもん

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