☆ハイローハート
俺たち男の子
ふとした拍子にちぎれてしまったふわふわのキーホルダー

ぽんっと無造作にベッドの上に置くと、近くでその様子を見ていたカブが目をキラリと光らせた


「ターゲット発見!!」


そんな姿に声をかけると体をグッと下げてジャンプするカブ

だけど、いつもならわけない高さのベッドまで届かずひょいっと床に逆戻りしてしまった


「カブ、またちょっと足の調子悪くなった??
ひどくなるようなら、病院行こうね」


何事もなかったかのようにそのままどこかへ行こうとしているカブの背中に話しかけた



彼は、パパが残業をして日付を越えた深夜の帰り道、吹きさらしの駐車場の片隅でダンボールに入れられているのを見つけて連れて帰ってきた猫だった


まだ生後数日なんじゃないかと思うような細く小さい体にはすでにノミが住み着いていて、ところどころ汚れて固まった毛
か細い鳴き声はそれでも懸命に生きようとぬくもりをさがしていて、アタシはタオルに包み込んで一晩中その折れそうに震える体を抱きしめ続けた


生きようと鳴きつづける彼の必死な姿は残酷で、アタシはずっと泣いていた

先住猫のサリーは気になるのか、少し距離を置いたところでずっと座ってアタシ達を見守っていた


待ちわびた朝
その日のニュースをひどくよく覚えている

動物病院があく時間まで彼の体をあたためて、座りっぱなしのお尻の痛みも感じないままボーっと見ていたテレビ


90歳を越えた往年の俳優が天命を全うして他界したニュース
10代のアイドルが自殺をしたニュース
お笑い芸人に第一子が生まれたニュース

今手の中で消えそうな命を抱いているから、余計に印象深かったのかもしれないけれど……

だけどテレビの中でキャスターが語る命はどこか空々しくて、アタシはテレビの電源を落とした


アタシの体の動きを感じて手の中でまた必死に鳴きつづける彼は、孤独で不安でどんなに辛い思いをしているんだろう


――自殺する人は嫌い

命を粗末にする生き物は人間だけ
自殺するのは、人間だけ


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