☆ハイローハート
別に……逃げないし

つかまれた腕を見ていると、電話の向こうの理一の声がこっちにまで聞こえてくる

『もう家帰っちゃった?』

「……いや、なんで?」

『いやさ~、ナルがうちに来てんだけど、とよきもこねーかなって思って』

「……ああ、どー……すっかな」

ってとよきの視線がこっちを見るから、首を傾げて見せる

『とよき、今どこ?』

「ん?」

『まさかまだあこと一緒?』

「まあ……」

『まさか、二人でホテル……とか』


……いや、聞こえてるからね

っていうか、よく考えたら熱烈な告白にほだされたけど、この人の友達……最低男と合コン大好き人間じゃん
うわ、早まった??

っつか、“ホテル”ってとこ否定してくれる??

『悪い悪い、切るわ!!
じゃあ、がんばって』

何をがんばるんじゃい

と気持ちがそわそわしだしたにも関わらずとよきは電話を切ってしまった

「否定してよ!!」

「何を??」

「ホ、ホテルって……
理一勘違いしたまんまじゃん!」

「あいつが勝手に想像して勝手に言ってるだけだから、別にいいじゃん」

「良くないでしょ」

「じゃあ、現実にすれば問題ないんじゃねーの」

…………出た

なんで男って全部そこにつながんの??

「調子のんなッッ!」

ととよきの腕を振り払うと、マンションに向かって歩き出した

アタシの数歩うしろを歩いてついてくる足音がきこえて、歩きながらちょっとだけ振り返ると寒そうにポケットに手をつっこむとよきが車道を走るスポーツカーをうらやましげに目で追っているのが見えて……

不覚にもちょっと、かっこいいと思ってしまった 



「恋の終わらせ方」の巻



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