☆ハイローハート
焼肉屋はおっちゃんおばちゃんが経営してる個人のお店で、俺はまるで息子のようにかわいがってもらっていた

「理一くん、夏休みには彼女つれていらっしゃいよ」

おばちゃんにそう言われて、みさきに焼肉をおごってやる約束を思い出す

6月に帰ってきて、運命は俺に味方してんじゃねーの?なんて浮かれたのもなんのその

龍一のカテキョは夏休みに入ってからってことになって、それに合わせて母さんの料理教室も夏スタートになってしまう

結局みさきには会えないまま早一ヶ月が過ぎようとしていた


やっぱり、メールはできない

大して用もないし

もちろん5階には降りれない

みさきの家に“ピンポーン”なんてとんでもない

ほんと今から思えば……俺よくあんなに簡単にみさきの家に入ってたな~って、昔の俺がうらやましい


だけど月日は確かに経っていて


終業式のためとよきと校内を歩いていると、途中で廊下が合流して俺たちの背後に来た下級生達が「先輩がぁ……」なんて楽しそうに会話しているところどころが聞こえてくる


それをかき消すひときわ高い声

「り~いちくん!!」

俺の腕につかまるようにぴょこんと飛び掛ってきた、さやか

「さやかも一緒に講堂行く♪」


聞くつもりはないのに、背後から「~~だよォ」「ヤダァ、~~かな」と聞こえていた女子達の声質がかわったのがわかった


“ウゼー、元カノぶってんじゃねえっつーの”

“カワイ~とか言われてっけど、別に普通じゃね??”


っつか、それ、俺らの話??

“ゲイノージンじゃないんだからカワイーとか言われてチョーシ乗るなって感じィ、全然ゲイノージンよりブサイクだよねー”


こわっ
女子、こわっ

思わず後ろを振り返ると、明らかにエクステをつけたロングヘアー、痛んだ毛先にぞっとした


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