☆ハイローハート
理一の元カノらしき女は段上を見上げるように振り返ると、アップにした髪から後れ毛が落ちる

「理一が関西弁フェチになったのは、その子が関西人だからなんですよ?」

階段の上に立つあこの背後から太陽の光が入ってきてまるで後光がさしているみたい

さらに逆光で彼女の表情ははっきり見えない

でも多分あこは今笑ってる

「だからね、先輩」

そんなあこの声に反応したようにちひろは階段を上がっていく

「理一は関西弁を話す好きな子が留学に行っちゃって寂しくて仕方なかったから……先輩はその代役だったってこと」

あこは、容赦なく人の逆鱗に触れる天才

ん?

……え?留学に行って寂しくて??


「その時は理一くんにめっちゃ可愛い彼女おったし」


先輩の強気な反論すら、あこは足蹴にする

「だから、モロが帰ってくるまえに別れたでしょ?」


周囲の爆弾発言連発についていけず、ポツネンと置いてかれたみたい


キーンコーンカーンコーン


と授業開始の合図すら、どこか遠い国の鐘の音みたいな心地で聞いていると……


「モロ、早く教室行くよ!」

とあこに急かされて、ちひろに「早く早く」と手招きされて、現実に連れ戻された


あこが先輩に「モロがいない間の理一の世話、ごくろうさまでした」と手をヒラヒラする

ちひろが「おつかれさまでした、先輩」とペコリ頭をさげるから、なんだかつられて


「ありがとうございました」


と言いながら階段を逃げるように駆け上った



「別にあんたの代わりをしたつもりないし!!!」



と先輩の怒鳴る声が階段に幾重も反響した



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