☆ハイローハート
龍一とバイバイをしてドアを閉める直前に室内に吹き込んできた風の軌跡が見えるようだった

冷たい風でできた道筋を目で追うと、静かな暗い家に1人

感情や想いだけが浮き彫りになる



青空の描かれた傘をさして

まるで毎日は青空だと思い込んでいた

そうしないと、潰れてしまうと思ってた


求められるままに答えて

それが自分だと思い込んでいた

そうしないと、アタシには価値がないと思ってた


だけどアタシの傘が破れてしまっても、「雨の日だってあるよ」と一緒に濡れてくれる人がいる

「1人じゃない」と傘を持ってきてくれる人がいる

濡れることだって人生には必要だ、って思えるような出来事に変えていく


傷ついて傷つけて、そうして関わりあっていく


恋と友情とお互いにバランスを取って成り立ってる


そして……自分の願いが必ず叶うわけじゃないとわかっているから、祈り続けられる

頑張り続けられる


キレイ事ばかりじゃない
みんなが幸せになるわけじゃない


だから、せめて、目の前の大切な人を

目の前の命を

アタシのそばにいる人達に、この手が届く限り


守りたいと思うだけ

幸せになって欲しいと願うだけ


そんな事ぐらいしかできなくて、でもそれが一番大切だと今は思えるの


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