先生の教科書
『リナ。もう、出る時間だから起きろよ。』

タバコの煙と共に彼氏の口から吐き出された低いトーンの声に、うとうとしながら、返事代わりに小さく頷く。

彼氏が起き上がる衝撃でベッドのスプリングが軋む音が、あたしを覚醒へと導くのに拍車をかける。

あたしは、眠気と闘いながらよたよた起き上がり、真っ白い乱れたシーツの上に座り込んで目をこすりながら、すでに衣服を纏い始めた彼氏に問い掛けた。

『あと何分?』

彼氏は、スーツのカッターのボタンをとめながら冷たく言い放った。
『あと10分。早くしろよ。遅れたら延長金は、お前が払えよ。』

その言葉にあたしは、一気に目が覚めた。

『はぁ!!?10分とかマヂありえないんだけど!!!いっつもラブホ来たらちゃんと出る時間より1時間早く起こしてって言ってんぢゃん!!!』

キレ気味にあたしは、彼氏に食ってかかった。
彼氏は着替え終えたらしく、ソファーに腰掛け、一服しながらこっちに視線だけ向けて答えた。

『起こしたけど二度寝したのは誰だか。てか早く着替えた方がいんぢゃね?もう、6分しかないし。』

彼氏の言い分に反論したいことは山程あるが、今は時間に余裕がない。

吐き出せ無い嫌な気分を不機嫌な表情で精一杯表現しながら、急いでチェックのミニスカートとブラウスを着て上からブレザーを羽織り、いつも着ている高校の制服姿になると、鞄を握り閉め、バタバタと玄関に向かって走った。
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