君のためにできること
「小橋華蓮」
彼女の名前が呼ばれたのちすぐに横開きのドアが音を立てて開く。
彼女はどこか他の生徒と違っていた。髪はショートボブ。髪の色は赤だった。身長は小柄なほうだが、何故か高くみえる。それは彼女がとても大人びてみえたからである。それと彼女は背中にギターケースを背負っていた。
彼女はまるで知っているかのように空いた僕の前の席にすわる。
「小橋。遅刻だぞ、黙ったまま席にすわるな。」
そう小林が言うと、だるそうに、荷物を置いて前に行く。
「学校がはじまる前には黒髪に戻してこいって言っただろう。変わってないじゃないか。」
「あっ、忘れてました。すぐに戻してきます。」
透き通るような声、容姿と声があまりにもかけ離れていて。僕は少し笑ってしまった。
「そ、そうか。じゃぁ明日には戻してこいよ。」
小林は意外に素直じゃないかと思ったのか、強気に彼女に言った。
彼女は無表情のまま僕の前の席までやってきて座る。ただ僕はこの時思った。半分以上に上がった期待が半分以下になってしまったと。ギターを持っていたので音楽やってるんだと思ったが、その時の僕には関係なかった。
彼女は僕の”かれん”というイメージを木端微塵に砕いたのだった。