君のためにできること
あれは、将来の話しをした時だった。
「いつもギター持ってるけど、上手いのか?」
「ギター?あー…これはベースだよ。」
「ベース?」
そのころの僕はベースってものの存在がわかっていなかった。
テレビの音楽番組でバンドとかみるけど、ギターがヴォーカルの両サイドを仕切っているのだと思っていたのだ。僕は不思議な顔をして尋ねた。
「ベース知らないの?ばっかじゃないの」
彼女は、呆れた顔をしてそう答える。
「うるさいな。音楽は聞くけど、俺は歌う専門なの。」
そういう僕に彼女からさらにつっこみがはいる。
「じゃぁ歌うのは得意なの?」
「うっ…」
僕は答えることができなかった。
カラオケとか普段あまり行かないし、学校での合唱も口パクで誤魔化していたし、どちらかと言うと下手な部類にはいるほうだったから。そんなことを考えている僕を悟ったのか、彼女は勝ち誇ったような顔をして言う。