君のためにできること
第五章
冬の寒さは心の寒さと同期し、この肌の痺れる感覚が心が痺れる感覚にも思えてくる。
あの事件を経て、僕の心は完全に痺れていた。

あれから数週間経っても君のことを忘れることができないでいた。そんな思いの中、僕と君は再び会うことになる。

恭介と君の友達の朱里が付き合うことになった。

僕は、もう君と逢えないと思っていたのに、君はまるで何事もなかったように僕の前に現れた。あの出来事は夢の中の出来事だと思うほど君は普通に僕に接してきた。
僕は自らあのことを蒸し返すことなどすることもなく。あの事件のことは僕の中で抹消することができていた。


「まさかだよな。あの恭介がちゃんと恋人作ろうと思うなんてさ。」

僕はちゃかすように恭介に笑いとばしながら言う。

「おぃー俺が不真面目の様な言い方してんじゃねーよ!」

そう言いながら、朱里のほうに向き返った恭介が言う。

「そんなことないからね。朱里―愛してるぅー」

「はいはぃ…よくしつけておくから浮気しそーになってたら言ってね。岳クン」

「なんだよー朱里までーそれじゃー俺が犬みたいじゃーん!」

恭介が本当に犬ように見えてきた。完全に朱里ちゃん尻に惹かれている。でもそんな二人を見ていると僕は中学生の頃の付き合いたての僕と彼女の事を思い返してしまい、僕は少し暗い表情をしてしまった。

そんな僕に気がついたのか君は僕に優しく声をかけてきた。
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