君のためにできること
「コンクールはいつなの?君の演奏を聴いてみたいな。」

「来月の10日よ。今年卒業する四年生のコンサートなの。是非、見に来てもらえると嬉しいな。」

「いいね。俺も行こうかな。」

すかさず、同意する恭介に僕はツッコミを入れる。

「お前にクラシックなんて聴く趣味ないだろ?」

「あーまたバカにしてるなぁー俺だってたまには聴くよ。」

そう言うと恭介は君たちに聞こえないようにして僕の耳元に向かって小声で言う。

「萌香ちゃん狙ってるんだろ?協力すっからよ!」

そう小声で言った後すぐさま恭介がみんなに聞こえるように言う。
「岳に言われたくねぇよ。岳だってロックが好きじゃん。それともそんな趣味もあったのか?」

僕は恭介に悟られるほど言動に出ていたようだ。恭介は僕に笑みを見せる。

「音楽に垣根なんてないのさ。ロックもクラシックもいいものはいいんだよ。」

僕は恭介に合わせてそう答えた。僕はあの頃から君の事が気になっていたのだろうか。自分でもわからない感情が僕を支配していく。

そんな僕たちを見ていて一瞬不穏そうな表情をした君達だが気にせずに朱里が言う。

「じゃぁ二人で来てよね。私も頑張るからちゃんと見ててね。恭介。」

朱里は同じコンサートでチェロを担当している。君と朱里と彼は同じ学科内のオーケストラだった。

こうして僕と恭介で君と朱里のコンサートを見に行くことになった。ただ僕はそれ以外にも君の彼を確認するということも君を応援するのと同じくらい重要な点として心に留めておいた。
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