DIABOLOS~哀婉の詩~
悲しき戦い
我々の国はサウロ王子の死によって歯車が狂い始めた。
サウロ王子が亡くなった今、王の後継者は、居なくなってしまった。騎士団は戦力も統率力も失っていた。残された我々11人の兄弟もまた未来を閉ざされた。あの時、姉の斬撃を受け、確実に死を実感した。だけど気がついた時には、傷が跡形もなく消えていた。これが、使徒の能力なのかと、我々誰もが感じていた。しかし、この事が使徒の能力と呼応するように、次々と覚醒が起こり始めた。
やはり覚醒は、誕生した順に起こり始めた。次に覚醒が始まったのは、バルト。バルトはシモンと同じように覚醒に失敗し、躰から炎が噴出し、もがき苦しみながら、灰と化した。次のアンドレアもその次のヤコブも同じように、灰と化した。覚醒に失敗した、バルト、アンドレア、ヤコブ・・・彼らの灰は、その丘から吹く優しい風に捧げた。彼らは風に成り、自由を手に入れたのだ。我々はそう思うことで、この事実を受け入れることにした。
残った8人は、運命を呪った。刻一刻と迫りくる死の恐怖に怯えた。消えてなくなってしまいたいという感情に押し潰されそうだ。自分自身で躰を傷つけたりもした。でも、死ぬことは許されなかった。治癒能力が、その力を増したのか回復が早い。傷はほんの数分もすれば跡形もなく消える。意識を失うこともなく、痛みすら差ほど感じないのだ。覚醒が我々を導いた時などなかったんだ。シモン、バルト、アンドレア、ヤコブは覚醒に失敗して、灰と成り、アンネは化け物に成り果てた。今となっては、死んでいった兄たちを羨ましく思う。自分たちはどうなってしまうのだろう。
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