DIABOLOS~哀婉の詩~
ささやかな幸せ
『ハァ・・・ハァ・・・・ハァ・・・・・・・ママ・・・・・』
僕は、不安気にママを見つめた。
『大丈夫だからね・・・ルカ・・・・・・。』
ママは大きな瞳で僕を見つめてそう言った。
あいつが僕たちを追いかけてきて、僕たちが居る丘の目の前までやってきた。
『さぁ、行きましょう。』
『うん・・・・』
僕たちは、当てもなく逃げた、ただひたすら逃げた。あいつから逃れるために。
高い草が茂る草原、姿を眩ますために、背を目一杯低くして。
それでも、あいつは追ってきた。まるで僕たちが向かっている場所がわかっているかのように。実際はあてなんか何もないのに・・・ただひたすらあいつから逃げているだけなのに。やがて、仄暗い、洞窟が眼下に現れた。
『はぁ、はぁ・・・・・・あぁ・・あそこに身を潜めましょう・・・』
僕たちは、洞窟に身を潜めることにした。もう僕たちにできることは、神に祈ることぐらいしかできない。僕らは身を潜めながらただひたすら祈っていた。しかし、その祈りも虚しく、見つかってしまうんだ。
『・・・・この子は渡さない・・・』
ママは、僕の前に両手を広げ、そう言った。そして、あいつは何も言葉を発さずに剣をママに向けた。
『・・・・・ママ・・・・・』
それでも、ママは怯まなかった。僕は、恐怖で何もすることができなかったんだ。
そして、あいつは、ママをその剣で串刺しにした。ママの鮮血が、僕に飛び散る。
『ママーーー!』
『はぁ・・・はぁ・・・・・あ・・・なたは・・・・・・い・・・・・・・きて・・・・』
『・・・ママ・・・』
『・・・いい・・・わ・・・ね・・・・・・・・・ル・・・カ・・・・・・・』
『ママ・・・・マァーマーー!マァマーーー・・・・・!』
『・・・・・・』
僕は、ママを何度も揺さぶって起そうとした。しかし、反応がない・・・・
・・・そして、やつはママの血がついた剣を僕に向けた・・・・
この世に神様なんて・・・・いないんだ・・・・・僕はそう心の中で呟いた。
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