小悪魔れんあい




玲さんが走り始めてから数分。
やっと道端で玲さんの足は止まった。

あたしはというと、普段から運動もあまり頻繁にしていないから随分と体力が落ちていたみたいで。息の切れようが半端ない。


「ははは、麗奈ちゃん大丈夫?」

「…、はぁっ…、まぁ…大丈夫かもっ…です…!」


と、話しながらもまだ息を切らしているあたしを玲さんはクスクス笑いながら見つめる。


この人、本当に不思議だ。



「さっきの人、彼氏?」

「えっ?」


突然の真剣な言葉。あたしは、言葉を返すことも忘れて玲さんを見つめることしかできなかった。


「叫心と、別れた…んだよね」

「……あ、はい…」


別れという言葉を聞いても、あまり体が震えなくなった。これはもう、別れを受け入れ始めているという証拠。

うん、ありがたい。
あたしの体、結構強いじゃん。


「叫心に聞いたよ」

「……」

「でも、本当かどうか確かめたくて…さ。学校まで行っちゃったんだ」

「そう、だったんですか…」

はは、と力なく笑う玲さん。
いつもは自身に満ち溢れているのに、今日だけはなぜか元気がなさそうに感じた。



「麗奈ちゃん、ごめんね」

「え?」

「…叫心、あんな奴でごめんね」

「っ…、いえっ!」


そんなことは、ない。
絶対にない。


あんな奴だなんて、思ったことない。むしろ、あんな人があたしの彼氏でいてくれたことに、すごく感謝してる。

あたしは、幸せだった。
すごく、すごく。毎日が充実していた。



だから、玲さんが謝ることなんて何もないのに。なのに、どうして玲さんはそんなにも苦しそうな表情をしているの?



どうして、辛そうなの?


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