月の下でキスと罰を。
愛にまみれた体でもって、瀬良はあたしのことをそっと抱きしめる。
瞼をなぞり、頬、首筋、腹、瀬良の美しい指はあたしの全身を這う。そして、瀬良は唇をあたしに当てて「月」と小さく呼ぶのだ。
幸せで震える。それは、誰にも邪魔されない、夜の暗闇にも隠されない行為。
あたしの軽い体は、瀬良の愛を、全力で全て吸い取ろうとするのだ。そんな時、体が動き出しそうになる。瀬良の背中を抱きしめる錯覚に襲われる。
まだ、外は雪が降っている。四畳半の工房にある小さな窓は、半分カーテンが開いていて、そこから外が見える。
瀬良は留守で、あたしは工房にひとりぼっちだった。ずっと、足、足、手、腕などの形になる前の部品達をずっと左から数えている。
なぜ、あたしだけに心があるのかしら。それの答えは見付からない。
この家に置かれている他の人形達も、答えてはくれないし、何も言わない。