さよなら、片思い【完】
「これ持っていればお兄とずっと一緒にいられる魔法の券なの!お兄!これ、有効期限ないよね!?無期限だよね!?」


「あぁ、もちろん。たった一人限定だから」


もうこの券はわたしには必要ないものだから。


お兄がずっと一緒にいたいと心から思える人に持っていてほしい。


「だからあげる!」


「ありがとう、ヒナちゃん。大事にするね」



あぁ、わかった。わたしがこの人を嫌いになれない訳。


だってお兄と似てるんだもん。お兄と似ている優しさを持っている人。


「それから、今度家に来るときはわたしが親子丼一人で作るから!」


「うん、楽しみにしてるね」


「あと…ガトーショコラ作ってきてよね!あれ、美味しかったから!」


「うん、美味しく作っていくね」


「やっ、約束だからね!唯お姉ちゃん!」


わたしが名前で呼ぶととびきり可愛く笑った彼女に見送られて今度こそわたしとお兄は家路へついた。


「お兄、彼女って良い人だね」


「だからそう言ったろ?」


「あと、可愛い人だね」


「ヒナなら唯の良さ、分かると思ってたよ」


それ、この前も言っていたな。


「なんで?」と首を傾げるとお兄は得意げな顔をした。


「ヒナは俺の妹だから、唯のこと好きになると思ってた」


わたしもいつか見つけたいな。


お兄以上に大好きになれて、お兄と唯お姉ちゃん以上にラブラブになれるそんな人に。


それまではやっぱりわたしの一番はお兄だからね。




【兄と優しい魔法の券】 完。





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