道摩の娘

 りいは弾かれたように後ろに転がった。

 まだはっきりとしない視界の中、降り立った人影があった。


「あ…晴明っ…」

 あまりにほっとして、思わず声に出た。

 晴明がそこにいる。

 それだけのことがこれほどに心強い。


「預かってて!」

 その声とともに、りいの前に何かが降ってきた。

 反射的に受け止めると、晴明の上衣であった。

(え…!?)

 一体なぜ脱ぐのか。

 混乱しながらもりいは単衣一枚で立っている晴明に目を向けた。


 いつかと同じ、眺めだった。

 晴明の髪が毛先から黄金に染まっていく。

 光の加減でもなんでもなく、内側から輝くような黄金色だ。

 りいは言葉も失い、ただ晴明の衣を抱えて見ているだけしかできない。

 変化はそこで終わらなかった。

 切れ長のまなじりが裂ける。

 口の端も大きく裂ける。

 晴明が気にしていた尖った耳は、ますます尖り、大きくなる。

 身体の変化について行ききれなかった単衣が破れる。

 恐ろしいほどの力が溢れ出す…


 …かくして、すべてが終わったあと、

 そこにいたのは、あの、黄金の妖狐だった。

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