秘密




父は私が中1の時に外資系の会社をリストラされてしまった。


上司の失敗を押し付けられ、お人好しの父は、上司を責めるでもなく、あっさりとそれを受け入れた。


両親は毎日のように喧嘩。
喧嘩と言うより母が一方的に喚いていたような気がする。


母はそのうち、夜遅くまで帰って来なくなり、外泊するようにまでなってしまった。


今思えば、他所に男の人が出来たのだろう。


そんな両親が離婚するのは時間の問題で、私は選択を迫られた。


父と母、どちらについて行くか。


私は父を選んだ。


母に着いて行って、知らない男の人と一緒に暮らすのは嫌だったし、父が一人になるのは可哀想だったから。


少なくとも、母には誰か他の人が居る。


一人ではない訳だから、母は大丈夫だろう。


でも父は一人では何も出来ないし、かなりのお人好し。


私が支えてあげないと。


私もかなりのお人好し。


家を売り、残りのローンを返済し、残りわずかな財産を分けて二人は協議離婚。


私と父は2DKのアパートに移り住む。


父は職探し、私はまだ不慣れな家事を一生懸命こなしていた。


初めて美味しく出来たカレーを父と食べようと、父の帰宅を待っていると、父から携帯に電話がかかってきた。


就職が決まったと、大学の先輩で、あまり大きくはないけれど、建設会社を経営していて、その先輩に相談したところ、自分の会社でよかったら雇ってくれると言う。


今らか先輩の自宅で夕食を私も一緒に招いてくれるらしい。


……カレー、美味しく出来たのに…


私はそんな事を考えながら出掛ける支度をし、迎えにきた父と共に先輩の家へと向かった。


私の元の家と比べると、かなかり、いや、立派な家に少し驚いた。


家に入ると先輩はにこやかに私に挨拶してきて、私は覚えていないけど、私が幼い頃何度か会った事があるらしい。


自分にも私と同い年の息子が居ると紹介された。


先輩の後ろから眼鏡をかけた、優しそうな男の子がやって来て。


「初めまして。佑樹です」


それが私と佑樹の出会い。



< 14 / 647 >

この作品をシェア

pagetop