秘密
「奏、少し痩せた?」
ベッドでうつ伏せになり、佑樹から顔を背けて寝そべる私にピタリと寄り添い、足を絡め、何も身に纏っていない私の背中を撫でながら、佑樹は聞いてきた。
「…別に、痩せてないよ?」
私は佑樹の方に顔を向け、笑顔で答えた。
そう言えば、彼女は少しポッチャリしてたな、私とは違うから感覚がズレたのかな?
こう考えてしまったのは、さっき枕の下に手を入れたら、小さなものが指先に感じられて、つまんで見て見ると、シルバーのハートのピアスだった。
私はピアスはしていない。
それをまた枕の下に戻した。
「…そっか」
佑樹は背中から頬に手を移動させて、私の顔にかかる髪を後ろに流す。
そのまま顔を近付けてキスしてきた。
佑樹とはもう何十回キスしてきたんだろう?
いや、何百?
数えきれない位のキスをしてきた。
でも今日初めて佑樹以外の人とキスをした。
佑樹とは違う声。
佑樹とは違う目線。
佑樹とは違う腕。
佑樹とは違うキス。
何もかも違った。
彼女と佑樹は間違いなくここで、さっきまで私と佑樹がしていた事をしたのだろう。
『……佑樹達がやってたらね…』
私は自分が言った言葉を思い出す。
佐野君は知っているのかな?
すでに彼女と佑樹が……
知っててあのメール送ってきたのかな?
だからあんな事したのかな?
私達もするのかな?
浮気なんだから、しなくちゃいけないよね。
佐野君はそのつもりみたいだし。
胸が、ドキドキしてきた。
やっぱり佑樹とは全然違うんだよね。
佑樹の長いキスが終わると、私は身体を起こし、ベッドから足を下ろす。
もう帰らないと。
佑樹も身体を起こして後ろから私を抱き締めた。
肩に顎を乗せ、私の頬に自分の頬をすり付けてくる。
「…奏……」
これもいつもと同じ。
再度求めてくる時の仕草。
……早く、帰りたい…
でも私には拒否権なんてない。
再び佑樹は私の身体をベッドに横たえた。
佑樹のキスが落ちてくる。