秘密
◆◆◆
「お疲れー」
「おう。お疲れ、気つけて帰れよ?」
スキンヘッドのマスターが頭をピカリとさせて、いつものようにビール片手にカウンターの中から言ってくる。
俺はヘルメットを軽く上げ、入り口の引き戸に手をかける。
「うん」
バイト先である居酒屋。
響屋(ヒビキヤ)の引き戸をガラガラと言わせ、店を出るともうかなりの店が閉まりかけていた。
週末は賑わうこの通りも平日の夜は人通りもまばら。
空を見上げれば、まだ冬の星座で、夜の寒さがまだまだ続くようだった。
店の横の狭い隙間に停めてあるバイクを出し、エンジンをかける。
腹に響く音が心地いい。
カワサキGPX400R
俺の愛車。
アクセルを二三度回し、ギアを入れ走り出す。
俺に気付いた付近の店の店員や、キャバ嬢達が軽く手を上げてくる。
ここは繁華街。
顔見知りも多い。
それに手を上げ答えると、繁華街を抜け、国道に出る。
時間が時間なだけに信号も点滅が多い。
家までスムーズにたどり着いた。
家、といってもアパート。
一人暮らし。
駐輪場のバイクスペースにバイクを停めて、三階建てのアパートの二階に上がり、一番奥のドアに鍵を差し込む。
205号室。
俺の城。
ドアを開け狭い玄関で靴を脱ぎ、メットと鍵を靴棚の上に置き、電気のスイッチを手探りで点ける。
真っ直ぐバスルームに向かい、手早くシャワーで入浴を済ませて、やっと一息つく。
「……今日も疲れた…はは」
中年のサラリーマンみたいな独り言を呟き、思わず乾いた笑いが出る。
仕方ない、生活費は自分で稼ぐと言う約束で親元を離れ、一人で暮らしてるんだから。
両親もしぶしぶながらも了承してくれた。
全部、俺の我が儘だ……
跳ぶ力を失ってしまった俺は、一人になりたくて、逃げたして来たんだ。
辛かった。
毎日それしかなかったけど、楽しくて、地元でも期待されていて、あちこちから推薦入学の話も来ていた。
自信満々だった。
いつかプロになるつもりで毎日がむしゃらに練習していたのに。
突然その夢は絶たれてしまった。
日常生活に何ら支障はないと医者は言ったけど、激しい運動はもう出来ない。
俺はもう………
バスケが出来なくなってしまったんだ。
「お疲れー」
「おう。お疲れ、気つけて帰れよ?」
スキンヘッドのマスターが頭をピカリとさせて、いつものようにビール片手にカウンターの中から言ってくる。
俺はヘルメットを軽く上げ、入り口の引き戸に手をかける。
「うん」
バイト先である居酒屋。
響屋(ヒビキヤ)の引き戸をガラガラと言わせ、店を出るともうかなりの店が閉まりかけていた。
週末は賑わうこの通りも平日の夜は人通りもまばら。
空を見上げれば、まだ冬の星座で、夜の寒さがまだまだ続くようだった。
店の横の狭い隙間に停めてあるバイクを出し、エンジンをかける。
腹に響く音が心地いい。
カワサキGPX400R
俺の愛車。
アクセルを二三度回し、ギアを入れ走り出す。
俺に気付いた付近の店の店員や、キャバ嬢達が軽く手を上げてくる。
ここは繁華街。
顔見知りも多い。
それに手を上げ答えると、繁華街を抜け、国道に出る。
時間が時間なだけに信号も点滅が多い。
家までスムーズにたどり着いた。
家、といってもアパート。
一人暮らし。
駐輪場のバイクスペースにバイクを停めて、三階建てのアパートの二階に上がり、一番奥のドアに鍵を差し込む。
205号室。
俺の城。
ドアを開け狭い玄関で靴を脱ぎ、メットと鍵を靴棚の上に置き、電気のスイッチを手探りで点ける。
真っ直ぐバスルームに向かい、手早くシャワーで入浴を済ませて、やっと一息つく。
「……今日も疲れた…はは」
中年のサラリーマンみたいな独り言を呟き、思わず乾いた笑いが出る。
仕方ない、生活費は自分で稼ぐと言う約束で親元を離れ、一人で暮らしてるんだから。
両親もしぶしぶながらも了承してくれた。
全部、俺の我が儘だ……
跳ぶ力を失ってしまった俺は、一人になりたくて、逃げたして来たんだ。
辛かった。
毎日それしかなかったけど、楽しくて、地元でも期待されていて、あちこちから推薦入学の話も来ていた。
自信満々だった。
いつかプロになるつもりで毎日がむしゃらに練習していたのに。
突然その夢は絶たれてしまった。
日常生活に何ら支障はないと医者は言ったけど、激しい運動はもう出来ない。
俺はもう………
バスケが出来なくなってしまったんだ。