秘密
「えっ?そんな、いいです、悪いです」
「遠慮しない、どれがいい?ビキニ?ワンピース?」
「いえ、ホントに、いいですら」
「これはお礼だよ、さっき言ったでしょ?感謝してるって」
「…でも」
「お兄ちゃんの言う事聞いて、じゃないと、あの秘密…」
「!…それはダメですっ!」
「よし、決まり♪行こう行こう♪」
言うと兄貴は奏を店内に引っ張っていく。
「ちょっ、兄貴っ」
「ん?お前も選ぶか?」
ショッブの中を見てみると、店員も客も全員女。
しかも女物の水着オンリー。
店内も女性客用の内装。
とても男が入れるような雰囲気ではない。
奏の水着は選びたい、だがしかし……
「なんだ、入れないのか?はっ、ガキだな?そこで待ってろ。行こ♪奏ちゃん♪」
二人してショッブに消えてしまった。
俺は店には入れず、敗北者。
あのバカ静には羞恥心と言うモノがどうも欠落してるらしい。
時にそれは羨ましくもある訳で…
……奏の水着…
はっ!
まさか試着したりしないよな?
俺を差し置いて、兄貴に見せるのか?奏?
………許せん。
恥ずかしいとか言ってられるか。
俺は店内に足を踏み入れた。
何処だ?奏?まだ無事か?
待ってろ今助けてやる。
「奏ちゃんは白が似合うな♪ね?お姉さん?俺の妹♪超可愛いでしょ?」
兄貴のバカ声がする方に歩いていく。
「ご兄妹なんですか?恋人同士に見えちゃいました♪可愛い妹さんですね。カッコいいお兄さんで羨ましいな」
ギャル風な店員の愛想笑いを通り過ぎ、奏を背中に隠す俺。
「兄貴。奏の水着は俺が選ぶ、兄貴は金だけ払え」
「あはは。やっぱり来たか?好きなの選べよ?俺も選ぶけどね?あ、奏ちゃん♪コレ試着してみる?」
と、手に持っているのは白いビキニのTバック。
「俺的にはスク水が好みなんだけど、ここ売って無いって、残念。茜はこっちの方が好きだろ?」
「…兄貴」
「ん?何だ?それともこっちか?」
もう片方の手に持っていたのは、殆ど紐のような水着だった。
「…それを奏に着せようとしてたのか?兄貴」
「うん。そうだよ♪」
俺の拳が兄貴のみぞおちに決まる五秒前。