秘密


生徒会室を出て放心したように歩く。

向かうのは屋上。

自然と足がそちらに動く。


第三校舎は球技大会の為か、人気が無くて、何処か私を安心させた。


今は誰にも会いたくない。

……佐野君以外には…


こんな情況なのに思うのは佐野君の事ばかりで。

胸が張り裂けそうで…


美里さんも今の私と同じ気持ちなのかな?

私と佑樹が出会う前から、ずっと佑樹が好きだったの?美里さん…

だったら何故もっと早く佑樹に想いを伝えなかったの?

そしたら……


なんて。

いくら考えても今の情況が変わる訳では無くて、はは、と小さく笑ったら、ポタリと上履きの上に水滴が落ちた。


一度出てしまった涙は止めることが出来なくて、後から後から上履きにシミを増やしていく。


「…うっ…ふぅっ…」


喉の奥が熱くなり、嗚咽が漏れる。

それでも足は屋上に向かって。


階段を上りドアを開けると、風が吹き込んできて、濡れた頬が冷たく感じられた。


外に出て数歩歩いて大きく息を吸い込んだ。


「奏…やっぱりここに来た」


ふわりと後ろから抱きしめられて、私はその優しい腕の中で目眩がしそうになる。


「…佐野君」

「来ると思って待ってた。てか、逃げてきた?ははは」


…ああ。

…ダメだ、佐野君の香り…

…やっぱり大好き…
…大好き…佐野君。


くるりと向きを変え、佐野君にしがみついた。


「…佐野君。優勝…おめでとう」

背中に手を回し、ギュッとシャツを掴んだ。

「うん。優勝した、約束、したしな」


佐野君も私を抱きしめてくれて、


「…奏?…泣いてる?」

「……佐野君が…優勝して…嬉しいの…」


こんなに近くに佐野君を感じていられる、これは嬉し泣き、悲しくて泣いてるんじゃない。


「はは。それ位で泣くなよ」


優しく頭を撫でてくれる佐野君。


………佐野君…


自分ではどうする事も出来ないくせに…


佐野君の気持ちを利用して。


それでも佐野君と一緒に居たいと願う私は、物凄く卑怯で、酷い人間なのかも知れない…




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