秘密
店内に入り中を見渡すとけど今は丁度昼時。
空いてる席があるのかと思う程込み合っていてた。
「茜。こっちこっち」
奥のテーブルから立ち上がり俺達に手を降る母さんを発見。
「お腹空いたでしょ?遠慮しないで食べなさい」
テーブルに着くと、おしぼりで手を拭きながら母さんがそう言って。
「…回る寿司で遠慮するかよ」
ボソリと呟くと。
「茜?あんたは少しは遠慮しなさいよね?こないだは一人で50皿も食べちゃって…」
「えぇっ?50皿?」
「そうなのよ。奏ちゃん…茜ったら大食いで…50皿って100個よ?
「………100個…」
」
「50皿位軽いだろ?今時のDKならそん位は食うぞ?それに100個じゃなくて100貫だ」
「それ位知ってるわよ。何?DKって、ダイニングキッチン?」
「男子高校生の略」
「……今時の高校生はわかりづらいわ…まあ、お腹壊さない程度に食べない…奏ちゃんも沢山食べてね?」
「はい。お寿司なんて久しぶりです、いただきます」
「奏何食う?取ってやる」
「レタス巻きと玉子」
奏の世話を焼きつつ寿司を口の中に放り込む。
以前カケルさんに連れてってもらった寿司屋は超が付く程の高級寿司屋だったけど、量が少なくて全然食べた気がしなかった。
庶民派な俺はカケルさんの価値観が理解出来ない。
まあ、カケルさんも逆の意味で同じだろうけどな。
「奏ちゃん?茜ってばね、今はこんなに大きくなっちゃって、大食いだけど、小さい頃はね?身体も他の子より小さくて、病弱で喘息で直ぐ熱出したりしてて、夜中に何度も救急車呼んだりして…ホント、手のかかる子だったのよ…」
そんな遠い目で奏に昔話をするのはやめろ。
…恥ずかしいだろ?
そう言いたいけど寿司を食うのに忙しい。
「そうだったんですか…今の佐野君からは考えられません…」
「でもね?バスケットを始めてからは身体も丈夫になってね?ぐんぐん身長も伸び始めて、今じゃ人より大きくなっちゃって…」
「………」
奏の箸が止まる。
「…だから、今の茜があるのはバスケットのお陰なの…」