秘密




そろそろ店を出ようかとして、トレイを持って立ち上がりかけたら、携帯の振動に気付き、再び腰を下ろした。


開いて見ると兄貴からの着信。


「……兄貴?」

「静さん?」

「ごめん、ちょっと出る」


言うと通話ボタンを押した。


『茜、今何処に居る?』

「飯食いに出てる、もう帰るよ…何?」

『今お前のアパートの駐車場に居るんだけど、俺』

「は?…何で?」

『何でって…迎えに来てやったんだろ?』

「………兄貴、仕事は?」

『んなもん、休みに決まってる』

「……休んだんだろ?」

『当たり前だ、可愛い妹の為』


社会人として……
この兄貴は尊敬に値する立派な兄なんだろうか?


まあ、電車代も浮くし、いいか。


「今から帰るよ…20分位で着くから…」

『わかった、待ってる』


電話を切ると兄貴が迎えに来てる事を奏に話して、拓也に電話をかける。


『佐野?何?まだ時間早いだろ?』

「拓ちゃん今自宅?」

『いや、美樹んち』

「じゃあさそのままそこに居て?車で迎えに行くから…」


兄貴が迎えに来てる事を拓也に伝える。


「じゃ、洋ちゃん俺達もう行くね?」

「何?どっか旅行でも行くのか?」

「まあ、そんなとこ…」

「はは、ますます羨ましいやつ…今度は練習も見に来いよ?」

「うん。行く」

「また、連絡するよ、奏ちゃん、またね」

「はい、さよなら」

「バイバイ、洋ちゃん」

「おう。またな、佐野」


奏と店を出てアパートに戻る。


アパートに着くと兄貴は車の中で、シートを倒して昼寝していた。


ウィンドウをコンコンと奏が叩くと、起き上がりそれを開けて。


「奏ちゃん、久しぶり、会いたかったよ」

「お久しぶりです、静さん」

「ああ…今日も眩しい位に可愛いね?花火大会、ばっちりメイクとセットしてあげるからね、お兄ちゃんが奏ちゃんの為に買った浴衣着てね?」

「え?…浴衣?」

「うん。お兄ちゃんが着付けもやってあげる」

「え?ホントですか?わあ、ありがとうございます、嬉しいな」


……俺は全然嬉しく無いけどね。


< 389 / 647 >

この作品をシェア

pagetop