秘密
そろそろ店を出ようかとして、トレイを持って立ち上がりかけたら、携帯の振動に気付き、再び腰を下ろした。
開いて見ると兄貴からの着信。
「……兄貴?」
「静さん?」
「ごめん、ちょっと出る」
言うと通話ボタンを押した。
『茜、今何処に居る?』
「飯食いに出てる、もう帰るよ…何?」
『今お前のアパートの駐車場に居るんだけど、俺』
「は?…何で?」
『何でって…迎えに来てやったんだろ?』
「………兄貴、仕事は?」
『んなもん、休みに決まってる』
「……休んだんだろ?」
『当たり前だ、可愛い妹の為』
社会人として……
この兄貴は尊敬に値する立派な兄なんだろうか?
まあ、電車代も浮くし、いいか。
「今から帰るよ…20分位で着くから…」
『わかった、待ってる』
電話を切ると兄貴が迎えに来てる事を奏に話して、拓也に電話をかける。
『佐野?何?まだ時間早いだろ?』
「拓ちゃん今自宅?」
『いや、美樹んち』
「じゃあさそのままそこに居て?車で迎えに行くから…」
兄貴が迎えに来てる事を拓也に伝える。
「じゃ、洋ちゃん俺達もう行くね?」
「何?どっか旅行でも行くのか?」
「まあ、そんなとこ…」
「はは、ますます羨ましいやつ…今度は練習も見に来いよ?」
「うん。行く」
「また、連絡するよ、奏ちゃん、またね」
「はい、さよなら」
「バイバイ、洋ちゃん」
「おう。またな、佐野」
奏と店を出てアパートに戻る。
アパートに着くと兄貴は車の中で、シートを倒して昼寝していた。
ウィンドウをコンコンと奏が叩くと、起き上がりそれを開けて。
「奏ちゃん、久しぶり、会いたかったよ」
「お久しぶりです、静さん」
「ああ…今日も眩しい位に可愛いね?花火大会、ばっちりメイクとセットしてあげるからね、お兄ちゃんが奏ちゃんの為に買った浴衣着てね?」
「え?…浴衣?」
「うん。お兄ちゃんが着付けもやってあげる」
「え?ホントですか?わあ、ありがとうございます、嬉しいな」
……俺は全然嬉しく無いけどね。