秘密





夜店の通りは来た時よりも随分と人も少なくなっていて、あちこちのお店を見て回った。


射的や輪投げやヨーヨー釣り、金魚掬い。

綿飴に林檎飴に苺飴にチョコバナナ。

静さんの好きなアニメのヒロインのお面があって、それも買って。


帰りは両手いっぱいにお土産を買って佐野君のお家に帰った。


門を開けて中に入ると。


「あっ、お帰り、そのままこっちに来て」


お母さんが庭先から顔を出してそう言ってきたから、そのままお庭の方に向かうと、佐野君のお父さんが縁側で静さんとビールを飲んでいて私達を見ると。


「お帰り、茜、お嬢さん方もいらしゃい」


お父さんも拓也君の事を女の子だと思っているようで、私は思わず苦笑い。


確かに今の拓也君は何処から見ても女の子。


お父さんに挨拶をして私達もそれぞれ縁側に腰を下ろすと、お母さんが西瓜を切って持ってきてくれた。


買ってきたお土産を広げるとお母さんは喜んでくれて。


お父さんも星の触覚のカチューシャを頭に付けて。


静さんはお面を被ってヒロインになりきり、私達を笑わせてくれたりして。


その後に皆で、今朝美樹ちゃん達が買ってきてくれた花火をして。


凄く、楽しくて、ホントに沢山笑った。


佐野君の家族は暖かい。


いつも私を歓迎してくれて、本当の佐野君の恋人みたいに接してくれる。


凄く嬉しいけど、同時に心苦しくなってしまう……


誰よりも佐野君の事が好き。
これは間違いなく本当の気持ち。


好きの一言が佐野君に言えない。


そんな私が佐野君の側に居てもいいんだろうか……


考え出すと胸が張り裂けそうになる。


佐野君自身が今望んでる事は……


佐野君の為に私が出来る事は……





















気持ちを封印して……


佐野君の側から…


離れてあげる事なんじゃないだろうか……




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