秘密
予想外だった。
バレーに続いて泳ぎも得意だったなんて……
足のつかない所までグイグイ引っ張って来たのに。
怖がる所か、以前コースケと競って泳いだ岩場目指して、スイスイと泳いで行く奏。
足がつかないなら俺にしっかり掴まってろよ計画が海の泡となって消えてしまった。
……ちょっと残念。
岩場にはリョータ達バスケ部が陣取っていて、高さ約7メートルはあるだろう岩場の天辺から飛び込むと言う、よい子は絶対に真似しちゃいけないような危険な遊びを、奇声を発しながら楽しんでいた。
奏は岩場に上がるなり。
「楽しそう…。私もやりたい」
「え?ちょっ…、奏。待てっ」
一人で両手足を使って岩場をよじ登り始めた奏。
意外におてんばな奏の行動に苦笑しつつ奏の後を追って俺も岩場を登る。
「足元、滑るから気を付けろよ?」
岩場には滑りを帯びた苔やら海草やらが所々に生えていて、ちょっと危ないなと思いつつ、俺の少し上を登る奏に注意するよう促し上を見上げると。
「うん。気を付けてるよ、大丈夫」
笑顔で肩越しに俺を振り返る奏。
よつばいになり、俺の少し上をよじ登るその姿はまさに絶景。
………やべ。
鼻血出そ………
ふと気になって岩場の途中から下を見下ろすとコースケ達が、クライマーな奏を、開いた口からヨダレが垂れてるんじゃないかと思う程、しまりのない顔で見上げていて。
俺はその辺にあった貝殻を拾ってエロガキ共に投げつけ、見てんじゃねぇよ!ビームを目から放つ。
俺のビームに恐れをなしたのか、コースケ達は次々に海へと飛び込んでいく。
全く…。油断も隙もない。
見上げると奏はもう既に登りきってしまっていて、俺もその後に続いて天辺までたどり着き、そこには奏ともう一人。
「マサト君、飛び込まないの?」
「……俺、高所恐怖症、なんです…」
震える声で岩場の頂上から下を見下ろすマサト。