秘密
「うしっ!ほぼ確実!」
たったの30分程なのに、ヨースケのシュートは八割方決まるようにまでなっていた。
……スゲー集中力。
「あつーっ!汗だくっ!」
「飲み物買ってくるよ、俺」
「おう!頼む」
フェンスの外側にある自販機からスポーツドリンクを数本買って、抱えてコートに戻る。
ヨースケは木陰で頭からタオルを被っていた。
「はい。洋ちゃん」
「お。サンキュー」
ヨースケはペットボトルを続けて二本空にした。
「ぶはー!うめーっ!」
やはり出てくる言葉は仕事帰りのサラリーマン。
俺もキャップを空けて一気に飲み干した。
冷たい液体が熱った身体に浸透していく。
「シュートは決まるようになったけど、実際はガードも居るし、思うようには決まらないだろうな」
「うん。でも、取って直ぐに打つのには代わり無いんだから、確実に入る特訓は必要だよ」
「だよな?どんな位置、どんな体制からでも打てるようにならないと……、やっぱ一石一丁で出来る技じゃ無いな…」
「うん。確かに…、アリウープは難しいから…、今度はあちこち動き周りながら、強弱もつけてパスしようか?」
「……いいのか?」
「うん。夏休みだし、いくらでも付き合うよ」
「ありがとう、スゲー助かる」
俺なんかで今のヨースケ力になれるんなら、これ位の事はやらせてほしい。
「チームメイトに頼めば快く引き受けてくれる奴もいるんだろうけど、皆それぞれ仕事してたり、病気持ってたり…、無理が出来ない身体の奴も居る、そんな中、実際誰かに頼むのは、気が引けるって言うのが本音なんだ」
「俺に気なんか使わなくていいよ」
「知ってるか?車椅子バスケって同じチームでもクラスがあるんだぜ?」
「クラス?」
「そう、クラス。俺なんかは片足が無いだけで、あとは健康だ」
「……うん」
片足が無いってだけでも、それは相当なハンデだと思うけど……
「俺とは違って病気だったり、他に違う障害を持った奴だって居るし、両足が無い奴だって居るんだ。そんな奴と同じ条件で試合するのは不公平だろ?」
確かにそうだな……
「俺は長時間プレー出来る代わりに、色々と制限しなくちゃファールになってしまう事もある」
「そうなんだ」
「うん。だから、その辺の兼ね合いも難しいんだよな…」
「みたいだね」
こうやって普通にヨースケとバスケの話が出来てよかった。
卑屈になることなく、頭を切り替えて、これからの事を考える事が出来るヨースケは、やっぱり俺なんかとは違って凄く大人だ。