秘密
−−ピンポーン…
インターホンを押して数秒。
『…はい。横田でございます』
落ち着いた感じの年配の女性の声がした。
佑樹の母親だろうか?
「あの…俺…、佑樹…君の同級生で佐野って言います。佑樹君は居ますか?」
『佑樹お坊っちゃんでしたら…もうそろそろお出掛けになる時間でして…』
………お坊ちゃん…
色々とツッコミたいけど、あえてそこは我慢した。
「少し話があるだけなんです。会わせてもらえませんか?」
『でも飛行機の時間が…「誰?三田さん」…あ、お坊ちゃん。お友達の方が見えてるんですが……』
……家政婦の……ミタ…
『……佐野?』
インターホン越しに佑樹の声がした。
「話が、あるんだ」
『……あまり時間が無いんだけど』
「少しでもいいから、話せないか?」
『………今、開けるから』
佑樹がそう言ってインターホンが切られると、門のロックを解除する音だろうか、ガシャンと木製の門から音がした。
門を開け中に入ると、広々とした敷地内一面に芝生が敷き詰められ、急に別の空間になってしまったみたいで、何の石かはわからないけど、艶々と光る不揃いな形をした石が、パズルみたいに綺麗に揃えられて、玄関先までの道を作っていた。
うちなんか門から玄関までほんの数歩だぞ?
実家とは比べ物にならない程の敷地面積の広さに思わず辺りを見渡してしまう。
外側の塀越しから建物は殆ど見えなかったけど、庭中にはウッドデッキ。
その向こう側には石段に囲まれた人工の池があり、その中央の噴水からは水が噴き出していた。
どう見ても一般家庭からはかけ離れた庭中を横に、玄関へと足を運ぶ。
玄関のドアはわりと普通のドアで、板チョコのような木製のドアを軽くノックした。