秘密
「…あっ、ゲーム、出すね?」
立ち上がろうとした私の腕を掴むと、佐野君がそれを引っ張る。
バランスを崩した私は佐野君の肩に鼻をぶつけてしまった。
「ふぐっ!」
鼻がツンとして涙目になり、私は鼻を押さえた。
「あっ。ごめん」
佐野君は私の肩に手を置き、私の顔を覗き込んだ。
…今のやり取り…
初めて佐野君とキスした日の事を思い出してしまって、私は少し笑ってしまった。
「…ふふふ」
「?…何がおかしいの?」
「だって、初めて佐野君とキスした日も、こんなんだった…」
すると佐野君は目線を上げて、少し考えてから、私の額に自分の額ををくっ付けて、
「……とりあえず、キスしようか?」
「……うん…」
佐野君の顔がゆっくりと近付いてきて、私は目を閉じた。
佐野君の暖かい唇が私の唇に触れる。
佐野君は肩に置いた手を私の背中に回し、何度も角度を変えて、キスしてきた。
私も自然と佐野君の背中に手を回す。
ゆっくりと背中を撫でられ、ピクリとしてしまう。
「…あ」
思わず声が出てしまって、唇が少し開いた瞬間に佐野君の温かい舌が滑り込んできた。
「…んっ…ふ………あ」
声なんか出すつもりはないのに、自然と唇の隙間から声が漏れてしまう。
「…奏…可愛い…」
佐野君はそう言ってさらに深く口付けてきて。
背中を撫でられ、頭がぼーっとしてくる。
佐野君の唇がいつの間にか首筋に異動してきて、背中がゾクリとして身体を反らしてしまう。
「…あっ…」
首筋に佐野君の唇を感じながら、佐野君の背中に回した手に力が入る。
「……奏」
佐野君は私の背中にシャツの下から手を入れて、パチン小さなと音がしたかと思うと、胸が軽くなったような気がして、急に冷静さを取り戻した。
…え?ブラ外された…?
これ以上はダメだ、肩以外にもアザがあるから…
「…佐野君!ダメッ」
私は軽くなった胸を両手で押さえ、身体を固くした。
「……嫌か?」
佐野君が悲しそうな顔をしていた。
「…いっ、嫌じゃない……、けど、今日はダメな日なの!」
「…は?ダメな日?」
「……うん、あの日なの…」