秘密
◆◆◆




………あの日って…


「女の子の日……か?」

「…うん…」


ははは。

………はぁぁ…

俺はガックリとうなだれた。

「…ごめんね。佐野君」

奏はうつ向き、ほのかに頬をピンクに染めた顔に上目使いで俺の顔を見ていた。

…その顔…やめて。

反則だから……

退場だとわかっててもファールしそうになる。

とりあえず…もちつけ…
いや…落ち着け。俺。

そうだ。こんな時は深呼吸だ。

…スーハー…スーハー…

…沈まれ沈まれ沈まれ…


「?佐野君?何やってるの?」

「…深呼吸」

「深呼吸?何で?」

「…沈めてんの」

「?沈める?何を?」

…言わせんなよ。
男の事情だ…


暫くヤってないから暴走しそうだった。
大事にしたいのに、奏の反応があまりにも可愛い過ぎて…

はぁ…情けない。


「…何でもないよ」

と奏の頭を撫でる俺。

俺もよく我慢した、エライぞ、俺。
誰か俺も撫でてくれ。

それより奏は今日倒れたんだ、それなのに俺ってば…

猿より反省せねば…


「…あの、ホントに大丈夫?もしかして具合悪いとか…」


床に手をつきよつばいになり、さらに上目使いで俺の顔を覗き込む奏。


…だから。その上目使いやめろって、せっかく沈まりかけてるのに、また復活しちゃうだろ?
退場になるから…

俺は少し後ろに下がり奏から距離をおく。

自分から引き寄せておいて、俺はバカか?

ただ奏の側に居たいと思って無意識に手が延びてしまった。

そしたら奏が初めてキスした時の事なんか言うから、思い出してしまって、キスしたくなった。

いや、キスはいつでもしたいんだけどね?

出来ればその先も…

…はっ!
いかんいかん、また復活してしまう。

…平常心、平常心…


−ヴ−ヴーヴー…

机の上に置かれている奏の携帯が震動しだした。

固い物の上に置いた携帯の震動はやけにうるさく感じる。

奏は立ち上がり携帯を手に取ると、


「……佑樹…」

「…彼氏?」

「……うん」

「電話だろ?出れば?」

「…うん。ちょっと、ごめんね?」

言うと奏は携帯を開いた。



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