きみの声がきこえない
VOICE 1
傷つかない方法
「あーマジかったるい、今日の一限」
「小川原、超うざいし!
ハゲのくせに威張ってんじゃねーよって感じ。ね、琴音?」
「ホントだよね、マジないわー」
あたしは、今日も上手に空気を読む。
人の視線、
言葉のつまり、
曇る表情。
そういう些細な変化を見逃さなければ、
人間関係もそこそこうまくやっていける。
人に合わせていれば、楽だし、嫌われない。
あたしは、ものすごく慕われるような魅力的な性格でもないし、
美人だったり、面白かったり、特別においしいキャラでもないし、
独自の世界を生きる一匹狼にもなれそうもない。
目立つわけじゃないけど、地味なわけでもない。
あたしは一番無難で、安全なポジションを確保するために、
人に優しくするし、楽しくなくてもその場をしのぐために笑う。
安全だからこそ、日々は平凡。
だけど危険にさらされるよりはマシだ。
安西琴音。
17。
いつも自分のことで一杯一杯。