きみの声がきこえない
あたしの母親はいつもどんな時にも
子供の心配ばかりしている。
引きこもりとか、いじめとか、うつ病とか、
そういう特集をワイドショーで見るたび、顔色を変えて、あたしを心配した。
最近あたしがちょっと反抗的になったとか、
ぼーっとしてることが多くなったとか、
家にいることが少なくなったとか、
そういうことにいちいち反応した。
だからお母さんは、
カウンセラーのたまごである秀くんに食いついたらしい。
よかったら、この子の話を色々聞いてあげて欲しい、
もし何かあったら面倒みてやってほしいなんて、頼み込んでいた。
あたしは、いくらなんでも無理があるでしょって思ったし、
秀くんも、まだ学生ですよ、と困っていたけど、
一日話していたら、秀くんはかっこよくて、頭もよくて、落ち着いていて、
あたしの方がすっかり懐いてしまった。