きみの声がきこえない

好きって気持ち


「おーい、琴音ー!」

土曜。

この健の嬉しそうな顔。


あたしは結局、健の誘いに乗った。


裏道へ入っていくと、

ライブハウスの前にはすでに人だかりができていた。


何やら色んな張り紙や落書きだらけの地下階段を降りていく。


薄暗い照明。

独特のこもった匂い。

心臓に響くベース音。


「1ドリンクだけど、何がいい?」

「オレンジ」

「オッケー。待ってて」


小さいライブハウスはすぐに人で一杯になった。

始まる前から、がちゃがちゃと煩くて、さらに箱一杯の人たちの心の声が重なり合って、耳鳴りがとまらなくて、あたしは息苦しかった。


結局、

一曲目の途中で気持ち悪くなって、しゃがみこんでしまった。
< 49 / 100 >

この作品をシェア

pagetop