きみの声がきこえない
―…

「ごめんね…健。

せっかくの先輩のライブだったのに…」


すぐ近くの公園のベンチであたしは横になっていた。


「病人が気を使うなよ。それより、本当に大丈夫か?」

「うん、ありがと」


健は照れたように鼻をこすった。


「ポカリ飲むか?」

「うん」

「おし。駅まで行ってくるから待ってて」


あたしはホッと息をついた。

健がスムーズに、あたしをライブハウスから連れ出してくれた。


頼りないと思ってたけど、

案外頼りになるんだなと今更ながら思った。


優しいのは元々だ。


友里はこういうとこに惚れたんだろうか?



その時、ポケットのケータイが震えた。

あたしはごそごそとポケットを探る。



「友里だ」
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