きみの声がきこえない

あたしは学校を出て、

陽介の家に向かおうとした。


すると、昇降口を出て、

道を曲がったところに陽介が壁に寄りかかっていた。


思わずチャリのブレーキを思いっきりかけた。


「よ」

と、二本指を立て、

陽介はいつものようにおどけて笑った。


「ちょっと陽介!!」

「しーっ!今俺一応、自宅謹慎中だから…」


慌てて口を押さえられ、あたしも慌てて辺りを見渡した。


「自宅謹慎って、何も悪いことしてないのに」

「ま、とにかく歩こうぜ」


陽介は、黒いTシャツにジーパン姿だった。

口元には痛々しい傷があった。


そして、何も言わずにあたしから自転車のハンドルを取った。
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