きみの声がきこえない

「あ、ごめんね。こんな話」

「いえ……」


優香さんは湯飲みに口をつけて、カレンダーに目をやった。

「もしかして、今日って……」


あたしはその意味を悟った。


―――琴音。

心臓が跳ねた。


声?

―――琴音!

陽介?



優香さんに挨拶をして、あたしは家を出た。


そして走った。


陽介だ。


陽介があたしを呼んでる。

あたしの名前を。


周りが何も見えなくなるほど、あたしは思い切りペダルをこいだ。


陽介の元へと、走った。

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