ご主人様に首ったけ!
すごくすごく悩んだ。


こんなこと、絶対いけないことだって。

でも、霧様が神くんに痛めつけられているところを想像しただけで涙が出てきそうになって……。


私が言う事を聞かなくちゃ――って……。

泣きそうになるのを堪えながら、必死に霧様に伝える。

すると霧様は、前と変わらない優しいあの笑顔で微笑んでくれた。


「やっぱりそうだったんだ。
でもね、こう見えても僕は武道全般が得意なんだ」

「ぶどう?」

「露?果物の武道を想像してる?」

「え、違うんですか?」

「ははっ、違うよ。武術の事だよ」

「えぇ!?」


ぶどう……って、もしかして武道のこと!?

神くんが言っていたのは、武道の事だったんだっ。

ってことは……?


「霧様、強いんですか!?」

「強いかどうかは分からないけど、小さい頃から色々習っていたし、一応段も持っているよ」

「そ、そうだったんですか……」


うそぉ……。

ってことは、私、あんなに悩まなくても本当に霧様に一言相談さえすれば無問題で解決でき
ていたってこと?

これまでの私の苦悩は一体……。


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