ご主人様に首ったけ!
「露、少し僕の話を聞いてくれるかな」

「え……?
はい」


突然話題をそらすかのように、霧様はふと表情を緩めた。


「僕の両親と兄は、すごく忙しい人たちで僕はなかなか構ってもらえなかった。

そして気付いたら僕は人と接する事を嫌い、かかわる事を避け続けていたんだ。
そこに露が来た」

「霧様……」


これは、霧様自身のお話?

初めて聞く、霧様が人とかかわる事を嫌うという理由――……。

どこか悲しそうに話される霧様を見つめながら、私は真剣に霧様の話に耳を傾けた。


「僕が留学中に、父が専属のメイドを雇ったという話は聞いていたけど、正直そんなものはいらないと思っていたんだ。

人間なんてみんな同じだって。
どれだけ親身に思ってくれていても、いつかはいなくなり、去っていくものだって。
冷たいものだ……って。

でも、露に会ってその考えは180度変わったんだ」

「……っ」


私に会って変わった?

私、霧様に何かしたのかな?


第一印象とか最悪だった気がする……。

緊張しすぎてロボット的な動きになっちゃってたし、どっかの柔道部の主将みたいな挨拶してたし。

あー、思い出すだけでも恥ずかしい!!


って、今はそんなことどーでもいいって!


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