ご主人様に首ったけ!
「ころころと変わる表情から目が離せなくて、その笑顔に吸い込まれていった。

それは、どんどん強くなっていって、露を誰にも渡したくなかった。
僕だけのメイドでいてほしかった」

「霧様……」


初めて聞かされる霧様の、私への想い……。

嬉しい事ばかりをおっしゃってくれて、胸が熱くなる。


「露に別れを告げられた時も、信じたくなかった。
前までの僕なら去って行く者はすぐに切り捨てていたのに、みっともないくらいに露にしがみついている自分がいた」

「き……りさま……っ」


こんなにも……。

霧様はこんなにも私を想っていてくださった……。


霧様はあまりご自分の思いを口にされることがなかったから、私だけがこんなに霧様をお慕いしているのかと思っていた。


でも、思い返してみれば。

時々語ってくれる熱い想いや、霧様の言葉は何よりも心に響いていた。


霧様にはっきりと“好きだ”と言われたときは涙が出た。


「露?僕は自分でもどうしたらいいか分からないくらい、露に溺れているんだよ?」


私だけじゃないんだ。

霧様も私と同じくらい、私のことを想っていてくださったんだ……。


悩む必要なんてなかったのですね。

霧様は、きっと全てを知った上で私を受け入れてくださった。


たとえ、一度は霧様から離れても、きっとそれさえも受け止めてくれたのですね……。


霧様……。

霧様っ。


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