KAGAMI
アタシと向かい合って目の前に居るお母さんの胸に刺さった包丁は、右利きのアタシが刺したものだから…左。
違う、違う違う!
殺意なんてなかった!
アタシは、お母さんが居ないと生きていける自身なんて…
アタシは目の前に広がる光景を信じたくなかった。
やったのは他の誰でもない、間違いなくアタシ。
嫌…
血が広がって、ゆっくりとお母さんのTシャツに広がっていく。
手に握ったままの包丁を、引き抜いた。
血が吹き出る、なんて事はなかったけど
苦しそうな顔をしたお母さんが、アタシに倒れ込んでくるのが怖くて
アタシは立ち上がって後ろに引き下がった。
ゆっくりと後退りする。
全てがスローモーションに思えた。
その時、玄関の戸が開く音がしてアタシの身体は止まった。