激愛パラドックス
好たちと別れてグラウンドに入ると、春やんがベンチから立ち上がった。
「遅いぞ」
「ごめんっ!」
チッ、好のせいで怒られたじゃん……。
「私、どうしてれば良いの?」
もう1人のマネージャーが、眼鏡を直しながら私をチラ見してきた。
…なんか、怖いんですけど。
「ソコに座って応援してれば良いよ」
春やんがさっき座っていたところを指差す。
…マネージャーの隣じゃん。
「…………」
「…………」
気まずい!気まず過ぎるっ!
他のベンチ入りの人たちは、応援に熱中しているのに、このマネージャーは全く興味がなさそうにしている。
…この人がマネージャーに選ばれた理由がよく分かる。
フェンスの向こうで熱狂的に応援しているサッカー部のファンの子がここにいたら大変なことになりそうだ。
「……あっ」
ボーッとしているうちに、ボールは篤史センパイの足元にあった。
そのまま3人を抜いて、ゴール前にいた羽柴センパイにパスを送る。