戀愛物語
「えっ? あ…うん…」

机にそっと手をつき、遡羅が顔を覗き込んできた。
彼に隠れ、巡が見えなくなってしまう。その時何故か、みことの中におかしな感情が思い浮かぶ。

どうしてなのだろう。まだ、巡を見ていたかったような。
遮られて、残念に思っている自分がいた。

「どうしたの? 変なみこと」

にこりと微笑まれ、みことは戸惑ったように曖昧な笑みで返事をする。
何かが引っかかって、おかしな感覚がする。
自分のことを気にしすぎて、みことは気がつかなかった。

巡の鋭利な光を纏う瞳が、隣にいた遡羅に向けられていたことに――……。

 


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