千変万化の剣
「犬って嬉しい時に尻尾を…」

「どうかされましたか?」

「いや。」


「では夕食にしましょう。」

テーブルを挟んで食事をする。


「なぁ。」

「はい。何ですか?」


「明日の作戦が成功したら尻尾触らせてくれねぇかな?」

「尻尾…ですか?」

イヨがモジモジする。

「ダメか?」


「す、少しだけなら。

構いません。」

「約束だからな?」

「…はい。


あの、一つ聞いても良いですか?」

「ん?」

「幸大さんは人を殺すことに迷いはないんですか?」


「迷い、か。」


「自分のやったことが正しいって言えますか?

簡単に人を殺すことができるんですか?」



「…俺はな、めちゃめちゃズルい人間なんだよ。」

「ズルい?」

「ああ。

そんな俺には今の質問には答えられない。」

「なら、なぜ戦えるんですか?

人は迷っていると戦えません。」

「自分のやったことが正しいって、それは100年後や200年後も言えるか?」

「え?」

「今やったことが未来にとんでもない事態を引き起こしたり、

今は悪いと思ったことが未来に平和をもたらすかもしれない。」

「そんなことはあるんですか?」

「例えば俺が人を殺した。

そしたら俺は悪人だ。


だけど、俺が殺した奴はもし生きていたら世界を滅ぼすほどの悪人だ。

そうなった時に俺は悪人か?」
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