空音
 「あ~そういう約束してたな。んなら練習終ったら声かけてみるわ。」
なんだこの緊張感は(笑)
今までならすぐに声をかけられていたはずがなぜか少し恥ずかしいといった感情が湧いてきている。
「練習終る頃まであの子窓際にいるわけないやん」
また入来が余計な一言を言う。
でも今は無理だ。ぜったいに声が裏返ってしまう。。身長以外でも自分がこんなに小さい男だったとは。

そして練習が終わり、たけしと入来がニヤニヤしながらおれの方を見ている。
この二人がにやけている理由は一つしかない。
それはさっきの子がまだ窓際から見えているからだ。
「じゃあ早く声かけて来い!!」
二人はもう以心伝心。普段のサッカーでは全く息が合ってないのにこんな時だけは息ぴったりだ。
しかし約束は約束だ。
俺は何を話し掛けようかを考えながら彼女に向かって歩き出す。
でもなんでこんなに長い時間彼女は窓際にいるのだろう?
このとき僕は彼女が暇なのかぐらいにしか思っていなかった。
そして頭の中はまたこのことだけになってしまう。
彼女になんて話し掛けようかと。
ねえ元気?。。。。いや知り合いじゃないのにこれはおかしいよな。
今度デートしない?。。。これはさすがに引かれるだろ。
ん~。。。そう思いながらふと振り返ってみると二人は身振り手振りで多分、ていうか絶対にこう言っていた。
「早く行け!!言え!!」と。

僕は彼女のことが見えるところまで来て彼女を見上げた。

彼女はなぜかずっと空を眺めてた。
ただただずっと空だけを見ていた。
そして僕は彼女に声をかけた。

妃奈。これが僕たちの1番最初の会話だよ。
君とのたくさんできる思い出の始まりだよ。






< 7 / 44 >

この作品をシェア

pagetop