恋の法則
あ…キス…だ。


と私は漠然と思った。



公太郎は屈んで、目を瞑る。




キス…しなきゃ。



私はゆっくりと目を伏せた。



公太郎の鼻が私の鼻に触れる。




あ…。




目の前にいるのは公太郎のはずなのに、



どうしよう。





『天宮』





藤沢の姿しか頭に浮かばない。





『なつみ』





藤沢…。




藤沢――――…。






「ごめ、…んなさい…」



私は呟いて、公太郎の胸を押し戻した。


何をしてるの?私は。





「なつみ…」



「ごめん…。公太郎」


私は下を向いて、公太郎の腕から離れた。



何をしてるんだろう、私。



本当にバカだ。




「ごめん…。私には…無理だよ」


何、感情に流されてるの?


上を見ると、公太郎は私を悲しそうな瞳で見ていた。




「私は…もう…公太郎とやり直す気はないの」


ちゃんと、決めたでしょ。



「どうして…」とかすかに尋ねる彼。



大好きだった公太郎。


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