雨音の記憶
雨音の記憶

第1節 雨音

「雨の音って、人間には程良いストレス発散効果が期待出来るんだって」

ファミレスの一角。

突然、何の脈絡も無く、向い側のソファーに腰掛けた夏実が言い出したので、飲みかけたコーヒーカップを口に付けたまま、俊介は彼女に視線を向けた。

「それでね、雨音って、人間が、お母さんのお腹の中に居た時に聞いていた音に、凄く良く似て居るんですって。だから人間は雨の音を聞くと、本能的に安心するんだって」

「へぇ、そうなんだ」

いきなり変な話を始めるのは夏実に関して言えば、珍しい事では無かったので、俊介は、それを何となく聞き流してコーヒーを、口の中に流し込んだ。そして、レストランの大きな窓から外を見ると、植え込みに紫陽花が植えられ、今が見頃と咲き誇って居た。
しかし、外は生憎の小雨模様、、外でじっくり鑑賞するには少し難の有る天気だった。



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