センチメンタル・ギター
朝日がやけに眩しい

映画かドラマの世界では

朝日に起こされコーヒーを飲んだりするだろう

学生の僕にはそんな余裕はなかった


急いで時間を確認

『よしっ、間に合う』

それからの家を出るまでの早さときたら

きっと、オリンピックがあれば金メダルだろう

『帰って部屋でも片付けよう』

そう思っていつも家を出る



学校まで、15分ほど自転車を走らせればつく

寝静まったネオン街を抜けて

登る者のやる気を削ぐほど、急な勾配の坂を超えて

やっと大学につく


『鼎(かなえ)君オハヨー』

我らがマドンナ穂奈美ちゃん

僕らはよき相談相手で幼馴染


穂奈美ちゃんと付き合いたいと思ったりしたけど

小さい頃から一緒にいるからか

今更『好きです』なんて言えないでいる


でも大学のミスコンで1位をとる彼女と友達なのは

僕の中では誇らしいことだった


自転車から降りて穂奈美ちゃんと一緒に登校

「そろそろ学祭やけどまたミスコン出ると?」

「前回は友達が勝手にエントリーしただけで、別に出る気なんてもともと無かったんだから」

望んでもない名誉を手に入れた穂奈美ちゃんは

去年のミスコンがあってから落ち込んでいた


ミスコンで優勝した子が友達であることに

少し誇りを持ってた僕はやり切れない気持ち…

「でもっ…」

「今日またCD借りに行くねっ」

そう言って僕の言葉を遮り

穂奈美ちゃんは経済学部に消えていった
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